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初心者から中級者の機械学習プログラム例:クラスタリング入門

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初心者から中級者の機械学習プログラム例:クラスタリング入門

機械学習は、データからパターンを学習し、予測や意思決定を行うための強力なツールです。その中でも「クラスタリング」は、教師なし学習の一種であり、データを類似度に基づいてグループ分けする手法です。この記事では、初心者から中級者の方に向けて、クラスタリングの基本的な概念から具体的なプログラム例までを解説します。

1. クラスタリングとは?

クラスタリングは、データポイントを互いに似ているもの同士が集まるようにグループ化することを目指します。これらのグループを「クラスター」と呼びます。教師あり学習(例えば分類)とは異なり、クラスタリングでは事前にラベル付けされたデータを用意する必要はありません。つまり、データ自体にどのような構造があるのかを探求する手法と言えます。

クラスタリングの応用例:

  • 顧客セグメンテーション: 顧客の購買履歴や属性に基づいてグループ分けし、それぞれのニーズに合わせたマーケティング戦略を展開します。
  • 異常検知: 通常とは異なるデータポイントを特定し、不正行為や故障などの異常を検出します。
  • ドキュメント分類: 類似した内容を持つ文書をグループ化し、情報検索の効率を高めます。
  • 画像セグメンテーション: 画像内のピクセルを色やテクスチャに基づいてグループ化し、物体認識などのタスクに利用します。

2. クラスタリングの種類

クラスタリングには様々な種類があります。代表的なものをいくつか紹介します。

  • 階層的クラスタリング (Hierarchical Clustering): データ間の距離に基づいて、階層的にクラスターを構築していく手法です。ボトムアップ(凝集型)とトップダウン(分割型)の2つのアプローチがあります。
    • 凝集型: 各データポイントを個別のクラスターとして開始し、最も近いクラスター同士を繰り返しマージしていきます。
    • 分割型: 全てのデータポイントを含む1つのクラスターから開始し、最も異質なクラスターを繰り返し分割していきます。
  • K-meansクラスタリング (K-means Clustering): 事前に指定したクラスター数 K に対して、各データポイントが最も近いセントロイド(クラスターの中心点)を持つクラスターに割り当てていく手法です。
  • DBSCAN (Density-Based Spatial Clustering of Applications with Noise): データの密度に基づいてクラスターを形成する手法です。密な領域をクラスターとして識別し、ノイズとなるデータポイントを特定します。

3. クラスタリングの評価指標

クラスタリングの結果がどれだけ良いかを評価するための指標もいくつか存在します。

  • シルエット係数 (Silhouette Coefficient): 各データポイントが自身のクラスター内での凝集度と、他のクラスターとの分離度のバランスを評価する指標です。-1から1の値を取り、1に近いほど良いクラスタリング結果であることを示します。
  • Davies-Bouldin Index: クラスター間の距離とクラスター内の散布度の比率を評価する指標です。値が小さいほど良いクラスタリング結果であることを示します。

4. PythonによるK-meansクラスタリングの実装例

ここでは、Pythonのライブラリ scikit-learn を用いて、K-meansクラスタリングの実装例を紹介します。

準備:

まず、必要なライブラリをインストールします。

pip install scikit-learn matplotlib numpy pandas

コード:

import numpy as np
import pandas as pd
from sklearn.cluster import KMeans
import matplotlib.pyplot as plt

# 1. データ準備
# ランダムな2次元データを生成
np.random.seed(0)  # 結果の再現性を確保
data = np.random.rand(100, 2)

# Pandas DataFrameに変換 (可読性向上)
df = pd.DataFrame(data, columns=['Feature 1', 'Feature 2'])

# 2. K-meansクラスタリングの実行
# クラスター数を3つに設定
kmeans = KMeans(n_clusters=3, random_state=0, n_init='auto') # n_initはバージョンによって引数が異なるため、'auto'を指定

# データにモデルを適用
kmeans.fit(df)

# 各データポイントがどのクラスターに割り当てられたかを取得
labels = kmeans.labels_

# クラスターの中心点 (セントロイド) を取得
centroids = kmeans.cluster_centers_

# 3. 結果の可視化
plt.figure(figsize=(8, 6))
plt.scatter(df['Feature 1'], df['Feature 2'], c=labels, cmap='viridis')  # データポイントをクラスターごとに色分け
plt.scatter(centroids[:, 0], centroids[:, 1], marker='X', s=200, color='red', label='Centroids') # セントロイドを赤色のXで表示

plt.title('K-means Clustering Example')
plt.xlabel('Feature 1')
plt.ylabel('Feature 2')
plt.legend()
plt.show()

# 4. 結果の評価 (シルエット係数)
from sklearn.metrics import silhouette_score

silhouette_avg = silhouette_score(df, labels)
print(f"Silhouette Coefficient: {silhouette_avg}")

コードの説明:

  1. データ準備: ランダムな2次元データを生成し、Pandas DataFrameに変換します。
  2. K-meansクラスタリングの実行: KMeans クラスをインスタンス化し、クラスター数を指定します。fit() メソッドを用いてモデルを学習させ、各データポイントがどのクラスターに割り当てられたか (labels_) と、クラスターの中心点 (cluster_centers_) を取得します。
  3. 結果の可視化: Matplotlibを用いて、データポイントとセントロイドをグラフ上に表示します。データポイントはクラスターごとに色分けし、セントロイドは赤色のXで表示します。
  4. 結果の評価: Silhouette Coefficient を計算し、クラスタリングの結果を評価します。

5. クラスタリングにおける注意点

  • 適切なクラスター数の選択: K-meansクラスタリングでは、事前にクラスター数 K を指定する必要があります。K の値を適切に選択することが重要です。Elbow Method や Silhouette Analysis などの手法を用いて、最適な K を探索することができます。
    • Elbow Method: クラスター数を増やしていくにつれて、データの分散がどのように変化するかを観察します。分散の減少が緩やかになる点(肘)を最適なクラスター数と見なします。
    • Silhouette Analysis: 各データポイントが自身のクラスター内での凝集度と、他のクラスターとの分離度のバランスを評価し、最適なクラスター数を探索します。
  • データのスケーリング: 特徴量のスケールが大きく異なる場合、K-meansクラスタリングの結果に影響を与える可能性があります。特徴量を標準化 (StandardScaler) や正規化 (MinMaxScaler) などの手法を用いて、スケールを揃えることを検討してください。
  • 初期値の影響: K-meansクラスタリングは、初期値によって結果が異なる場合があります。n_init パラメータを調整することで、複数の初期値で試行し、最も良い結果を選択することができます。

6. より高度なクラスタリング手法

K-meansクラスタリングは比較的単純で理解しやすい手法ですが、データの形状によっては適切なクラスターを形成できない場合があります。より複雑なデータ構造に対応できるクラスタリング手法として、以下のようなものがあります。

  • DBSCAN: 密度の高い領域をクラスターとして識別するため、ノイズとなるデータポイントを適切に処理することができます。
  • 階層的クラスタリング: データ間の距離に基づいて階層的にクラスターを構築するため、データの構造をより詳細に把握することができます。
  • ガウス混合モデル (Gaussian Mixture Model, GMM): 各クラスターがガウス分布に従うと仮定し、確率的なクラスタリングを行います。

7. まとめ

この記事では、クラスタリングの基本的な概念から具体的なプログラム例までを解説しました。クラスタリングは、データから隠れた構造を発見するための強力なツールです。様々な種類のクラスタリング手法や評価指標を理解し、適切な手法を選択することで、より効果的な分析を行うことができます。

参考文献:

このブログ記事が、初心者から中級者の方の機械学習におけるクラスタリングの理解の一助となれば幸いです。